2017年11月1日水曜日

ドイツ・ゼンハイザー本社のFLAGSHIP STOREを訪ねてみた

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工業大国ドイツの音響メーカー「ゼンハイザー(SENNHEISER)」
ちょっとオーディオが好きな人や、放送映画業界人には知らない人はいないくらい有名な企業だ。
そのゼンハイザーの本社工場及びFLAGSHIP STOREを訪ねてみた。


ゼンハイザーの本社は、ドイツのハノーファーというドイツ北部の街にある。
首都であるベルリンや日本からの直行便が発着するフランクフルトからは離れた場所だ。
ハノーファーは、駅周辺は古い建造物も多い賑やかな街だが、
ゼンハイザーの本社は中心部から20km弱離れたBissendorfという田舎に置かれている。
創業者であるフリッツ・ゼンハイザー博士が製品開発を始めたこの場所が、
今でも放送用マイクや高級ヘッドホンの開発・生産拠点になっているのだ。

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今回はフランクフルトからゼンハイザー本社のあるハノーファーに向かう。
フランクフルトからハノーファーは空路を使うこともできるが、今回は列車移動を選択。
ドイツの鉄道は技術的に優れており、工業に興味がある人ならば是非とも乗車をおすすめする。

出発地であるフランクフルト中央駅。
歴史的建造物を思わせる重厚な佇まいが印象的な駅舎である。

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フランクフルトからハノーファーまでは、電車で約3時間強かかる。
ドイツ鉄道といえば高速列車のICEが有名だが、今回は快速REを利用。
REは事前の割引切符を使えばICEの半額くらいで利用でき、時間も座席もICEとそれほど変わらないので、とてもお財布に優しい列車である。
日本のJRで言うと、ICEは新幹線、REは特急に相当すると言っても良いだろう。
ドイツ鉄道はICEもREも同じレールの上を走行するので、なんとも不思議な感じではあるが。

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いよいよフランクフルトを出発。
日本では、ブルートレインくらいしか馴染みのない機関車牽引の客車列車だが、発車時の「ガチャンッ!」といった振動は全く無い。
いつ出発したかわからないほど静かに列車はホームを離れていく。

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この列車は指定席もあるが、ドイツ鉄道の指定席システムは日本と異なり、基本的にすべての列車が自由席という扱いである。
事前にネットや窓口などで指定席を購入すると、座席の荷物棚下に指定席購入駅区間が表示され、その区間外であれば指定席券を購入していなくても座席を利用できるというシステムだ。
日本で自由席車両は満席なのに指定席車両は席が空いているという場合があると思うが、
この場合指定席券を持たずに指定席に座ると車掌に席を立つ様に言われてしまうだろう。
ドイツの場合はそのようなことはなく、空席を効率的に使用できるのに加え、
乗車時にも自由席車両か指定席車両かをいちいち確認せずに済むのだ。
ただ、鉄道会社側には車両に指定席区間表示システムを組み込む必要があり、運行コスト増に繋がることだろう。
これを当たり前に日々運用しているところを見ると、さすが鉄道先進国であると思い知らされる。

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フランクフルトから3時間強、定刻から10分ほど遅れて、目的地ハノーファーへ到着。
ガラス張りの壁が印象的な、綺麗な駅である。
ホーム数も多く、日本で言うと名古屋駅くらいの規模だろうか。

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ゼンハイザーは市街地から離れたBissendorfという場所にあるため、S4というローカル線に乗り換える。
ハノーファー中央駅から数えて6つ目の駅「Bissendorf駅」がゼンハイザー本社の最寄り駅だ。
平日のお昼時だが、大人に加え多くの子供も列車を待っていた。

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ホームの案内標は液晶式。
英語は表示されずドイツ語のみの表記だが、かえってそれがシンプルで必要な情報は十分わかる。
その後ろには、ドイツ人が愛するチョコレートの広告が掲げられている。
旅にお伴にもピッタリのドイツ・リッターチョコレートは、スーパーでも気軽に手に入るためお土産に丁度いい。

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ハノーファーを出発して20分ほどで、Bissendorfという小さな駅に到着。
1組の対面ホームに、待合室がそれぞれあるだけの無人駅だ。
ちなみに、ドイツの鉄道には改札というものがない。
なので、どの駅もホームと外を隔てる柵が基本的には存在せず、駅構内への出入りが自由である。
それだとキセルやり放題では?と思うかもしれないが、ドイツの鉄道では列車乗車中に頻繁に抜き打ちの検札があり、その時に切符を持っていなかったら問答無用で罰金60EURを支払わなければならないのだ。
もちろん検札をスリ抜けられれば切符を持っていなくても乗車可能だが、車掌さんはかなりのプロなので人間の心理をついたタイミングで見事に検札にやってくる。
罰金金額がそこそこ高額ということもあり、キセルをする人もあまり居ないようだ。
日本の改札ありきのシステムとまるで違い少々驚きだが、改札がないことによる乗客側のメリットは多い。(改札渋滞というものが存在しない・駅構内の構造がシンプルにできる等)
ただ、ローカル線も含め駅間の距離がそこそこ長く、乗客全員の検札を行えることが前提のため、日本の山手線のようにそれが不可能な場合は実現はできないだろう。

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日本のように、駅番号や各言語の駅名・隣の駅などの表記が一切ない、シンプルな駅名標。
その上にはドイツ鉄道の標準時計。
文字盤のデザインは、スイス鉄道のそれに似ているが、秒針のデザインは色は赤で同じものの、スイス鉄道のものとやや異なる。
スタイリッシュでとても見やすい時計であり、そのデザイン力の高さに思わず溜息が漏れる。

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Bissendorfの駅前通り。
バス停があるだけで、商店などはなくとても静かである。
一見何の変哲もない風景だが、よく見ると電柱が一本もない。
そう、ドイツはこんな田舎でも(失礼!)電線の地中化がされているのである。


Bissendorf駅からゼンハイザー本社までは約1.5km。
辺りは閑静な住宅街で、馬もいる牧場もある。
歩きながら「ここは何のお店だろう?」と散策するのも面白い。

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ドイツ・ゼンハイザー本社に到着!
営業中のはずだが、やけに静かだ。
FLAGSHIP STORE前には、エントランスを利用した小さな噴水がある。

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FLAGSHIP STOREの奥には工場と思われる大きな建物がある。
そのさらに奥の茶色の屋根の建物は、ゼンハイザー創業時からあるらしい。
ゼンハイザー好きにとっては、この光景だけで既に唾涎ものだ。

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早速、FLAGSHIP STOREに入ってみる。
全体的にミュージアムのようになっており、ゼンハイザーがこれまで作ってきたヘッドホンやマイクの名機と呼ばれるものがズラリと並ぶ。
もちろん、一部の商品については購入可能である。
U87iなどの高級マイクロホンで有名なノイマンも、ゼンハイザーの傘下であるため、ゼンハイザーの製品に混じって展示が行われていた。

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ショップ内に3D Audioのデモコーナーが設けられていた。
どうやら、ステレオの音源をゼンハイザー独自の技術で9.2chの3D音源に変換するものらしい。
係の人に頼んで説明をしてもらったが、流暢な英語で一部しかわからず…(泣)
デモは異なるライブ音源が2つあり、一つはステレオ音源を3D Audioに変換したもの、もう一つはマルチチャンネルで録ったものを9.2chにトラックダウンしたものだった。
スピーカーがNEUMANNのKH310シリーズだったということもあってか、そのサウンドは大迫力。
言葉では言い表せないが、よくある3D変換音響とはまた違ったリアルなものであった。

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デモブースの壁にはDiscover Ultimate Soundの文字が誇らしげに掲げられていた。

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今回、ゼンハイザー本社を訪ねてみようと思ったきっかけは、日頃からお世話になっているゼンハイザーのマイクがどのような所で作られているのか興味を持ったことに尽きる。
個人での訪問だったため、工場見学等はできなかったが、FLAGSHIP STOREで係の人から直接話しを聞けたのは良い思い出となった。
この場所に限ったことではないが、ドイツ人は面倒見がよく優しい人ばかりなので、安心して色々聞くことができた。
悔やまれるは自身の英語力。もうちょっと専門的な会話ができるようになりたいものだ。
ドイツ語をマスターできればそれが一番なのだが…
何はともあれ、ゼンハイザー好きなあなたがドイツに行くことがあれば、是非ともゼンハイザー本社を訪ねてみることをオススメしたい。

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